1.パウロの最高法院での証し
・パウロを民衆のリンチから救ったローマの守備隊長は、パウロが何故告発されたかを知るために、ユダヤ人議会を召集するように求めた。こうして、パウロは最高法院の議員の前で証をする機会を与えられた。彼は最高権力者である大祭司さえも恐れていない。
−使徒言行録23:1-3「パウロは最高法院の議員たちを見つめて言った『兄弟たち、私は今日に至るまで、あくまでも良心に従って神の前で生きてきました』。すると、大祭司アナニアは、パウロの近くに立っていた者たちに、彼の口を打つように命じた。パウロは大祭司に向かって言った『白く塗った壁よ、神があなたをお打ちになる。あなたは、律法に従って私を裁くためにそこに座っていながら、律法に背いて、私を打て、と命令するのですか』」。
・この場面は、ルターのウォルムス国会での証言を思い起こさせる。教皇に対する告発を取り消すように、皇帝カール5世から求められたルターは、「私は神にそむくことは出来ない、ここに私は立つ」としてそれを拒否する。
-1521年 4月17日ルターの証言「私は教皇と公会議の権威は認めません。なぜなら、それらは互いに矛盾しているからです。私の良心は神のみことばにとらわれているのです。私は何も取り消すことができないし、取り消そうとも思わない。なぜなら、良心にそむくことは正しくないし、安全でもないからです。これよりほかに私はどうすることもできない。ここに私は立つ。神よ、私を助けたまえ。アーメン。」
・パウロの発言をめぐって、最高法院の議員たちの間に意見が分かれた。主流派のサドカイ派はパウロを違法とし、他方、パリサイ派はパウロを擁護する。ユダヤ教も一枚岩でなかったことがここに示されている。
-使徒言行録23:6-9「パウロは、議員の一部がサドカイ派、一部がファリサイ派であることを知って、議場で声を高めて言った『兄弟たち、私は生まれながらのファリサイ派です。死者が復活するという望みを抱いていることで、私は裁判にかけられているのです』。パウロがこう言ったので、ファリサイ派とサドカイ派との間に論争が生じ、最高法院は分裂した。サドカイ派は復活も天使も霊もないと言い、ファリサイ派はこのいずれをも認めているからである。そこで、騒ぎは大きくなった。ファリサイ派の数人の律法学者が立ち上がって激しく論じ、『この人には何の悪い点も見いだせない。霊か天使かが彼に話しかけたのだろうか』と言った」。
・サドカイ派は大祭司を中心とする権力者たちで、体制維持のためにローマと妥協を繰り返した。現代の私たちも教会の運営のみに心を注ぐ時、サドカイ派になる危険を有する。信仰は苦難の中で証ししなければいけない。
-使徒言行録9:15-16「主は言われた『行け。あの者は、異邦人や王たち、またイスラエルの子らに私の名を伝えるために、私が選んだ器である。私の名のためにどんなに苦しまなくてはならないかを、私は彼に示そう』」。
2.パウロを危険から守られる主
・最高法院での審議は収拾がつかなくなり、千卒長はパウロを兵営に連れ戻す。そのパウロに主が現れ、「勇気を出せ、あなたはローマでも証をしなければならない」と励ます。パウロを必ずローマまで導くとの幻である。
-使徒言行録23:11「その夜、主はパウロのそばに立って言われた『勇気を出せ。エルサレムで私のことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない』」。
・裁判の場でパウロを死刑に出来なかったユダヤ人たちはパウロの暗殺を企てる。しかし、パウロの甥がこのことを聞き込み、パウロに通報する。
-使徒言行録23:12-16「夜が明けると、ユダヤ人たちは陰謀をたくらみ、パウロを殺すまでは飲み食いしないという誓いを立てた・・・この陰謀をパウロの姉妹の子が聞き込み、兵営の中に入って来て、パウロに知らせた」。
・パウロからの通報を受けて、千人隊長はパウロを総督府のあるカイザリアに移送する。パウロを襲撃から守るために500名のローマ兵が立てられる。神は敵であるローマ兵をさえ用いて、パウロをユダヤ人から護られた。
-使徒言行録23:23-24「千人隊長は百人隊長二人を呼び「今夜九時カイサリアへ出発できるように、歩兵二百名、騎兵七十名、補助兵二百名を準備せよ」と言った。また、馬を用意し、パウロを乗せて、総督フェリクスのもとへ無事に護送するように命じた」。
・主はパウロをカイザリアに導き、総督の前に立たせ、裁きを通して、パウロはローマに行くことになる。しかしその前に、パウロはカイザリアの牢獄での2年間の幽閉に耐えなければいけない。主の言葉は必ずなるが、それは人の思惑を超える故に、私たちの信仰が試される。
-使徒言行録24:27「さて、二年たって、フェリクスの後任者としてポルキウス・フェストゥスが赴任したが、フェリクスは、ユダヤ人に気に入られようとして、パウロを監禁したままにしておいた」。