１．ピラトの裁き
・ピラトはイエスから「私は真理を証しするために来た」との答えを引き出した。しかし、ピラトは真理などに興味がなく、ユダヤ人との政治取引を始める。
−ヨハネ18:38-39「ピラトは言った『真理とは何か』。ピラトは、こう言ってからもう一度、ユダヤ人たちの前に出て来て言った。『私はあの男に何の罪も見いだせない。ところで、過越祭にはだれか一人をあなたたちに釈放するのが慣例になっている。あのユダヤ人の王を釈放してほしいか』」
・提案が拒否されたピラトは、イエスを鞭打つことによってその場をしのごうと試みる。
−ヨハネ19:1-5「ピラトはイエスを捕らえ、鞭で打たせた。・・・ピラトはまた出て来て、言った『見よ、あの男をあなたたちのところへ引き出そう。そうすれば、私が彼に何の罪も見いだせないわけが分かるだろう』。イエスは茨の冠をかぶり、紫の服を着けて出て来られた。ピラトは『見よ、この男だ』と言った。」
・「この男を見よ」、ラテン語『エッケ・ホモ』という言葉だ。それは姦淫の女を連れてきて、「この女を見よ」とイエスに迫った律法学者と同じだ。彼らの関心は自分であり、引き連れた相手のことを何も考えていない。
・ユダヤ人たちはピラトの言葉を聞こうともせず「イエスを十字架につけよ」と叫ぶ。ピラトは「勝ってにしろ。リンチでも何でもするが良い。私には関係がない」と事態を放り投げる。
-ヨハネ19:6「祭司長たちや下役たちは、イエスを見ると『十字架につけろ。十字架につけろ』と叫んだ。ピラトは言った。『あなたたちが引き取って、十字架につけるがよい。私はこの男に罪を見いだせない。』」
・あくまでもイエスを釈放しようとするピラトにユダヤ人たちは「あなたがこの男を釈放するならば、皇帝に訴える」と脅す。ピラトは自分の立場を危うくしてまで、イエスを守るつもりはない。イエスの死刑が決まった。
-ヨハネ19:12-13「ピラトはイエスを釈放しようと努めた。しかし、ユダヤ人たちは叫んだ『もし、この男を釈放するなら、あなたは皇帝の友ではない。王と自称する者は皆、皇帝に背いています』。ピラトは、これらの言葉を聞くと、イエスを外に連れ出し、ヘブライ語でガバタ、すなわち「敷石」という場所で、裁判の席に着かせた。」
２．エッケ・ホモ（この男を見よ）
・ピラトはイエスが言った真理など興味がない。私たちも自分の理解できないこと、関心のないことは無用のものとして捨てる。イエスの復活を聞いたアテネの人たちもそうだった。しかし、捨てた者は命も捨てる。
-使徒行伝17:32-33「死者の復活ということを聞くと、ある者はあざ笑い、ある者は『それについては、いずれまた聞かせてもらうことにしよう』と言った。それで、パウロはその場を立ち去った。」
・群集も同じである。日曜日にイエスをメシアが来たとして歓呼して迎えた群衆が、イエスが自分達の願いをかなえてくれないのを知ると、金曜日には「十字架につけよ」と叫ぶ。役に立たないものは捨てる。
-ヨハネ2:23-25「イエスのなさったしるしを見て、多くの人がイエスの名を信じた。しかし、イエス御自身は彼らを信用されなかった。・・・イエスは、何が人間の心の中にあるかをよく知っておられたのである。」
・祭司長たちはイエスに対する妬みと憎しみで、イエスを十字架につけた。彼らは「罪なきものだけが石を投げよ」とのイエスの言葉に対して、自分達は正しいとして石を投げてしまった。
-ヨハネ8:7-8「イエスは身を起こして言われた『あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず、この女に石を投げなさい』。そしてまた、身をかがめて地面に書き続けられた。」
・石を投げた者はその責任を神から問われる。ユダヤ人たちは紀元７0年に国が滅ぼされ、その後は『漂浪のユダヤ人』として迫害を受ける。迫害の根拠とされたのは、彼らのピラトに対する言葉だった。
-マタイ27:24-25「ピラトは、それ以上言っても無駄なばかりか、かえって騒動が起こりそうなのを見て、水を持って来させ、群衆の前で手を洗って言った『この人の血について、私には責任がない。お前たちの問題だ』。民はこぞって答えた『その血の責任は、我々と子孫にある』」
・キリスト教徒もまたユダヤ人に石を投げた。長い間のユダヤ人迫害がナチスのユダヤ人虐殺を生んだ。石を投げた者はその責任を問われる。だから聖書は言う「石を投げるな」。
-ローマ12:18-21「1あなたがたは、すべての人と平和に暮らしなさい。愛する人たち、自分で復讐せず、神の怒りに任せなさい『復讐は私のすること、私が報復する』と主は言われると書いてあります。『あなたの敵が飢えていたら食べさせ、渇いていたら飲ませよ。そうすれば、燃える炭火を彼の頭に積むことになる』。悪に負けることなく、善をもって悪に勝ちなさい。」