すべて重荷を負うて苦労している者は、私のもとに来なさい。

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1.世に行われる愚かな事々

・世の中には愚かな人が多く、その愚かさが知恵や名誉を打ち壊す。「どんなに値の高い香油も死んだ蝿が混入すれば無価値になる」とコヘレトは警告する。
-コヘレト9:18-10:1「知恵は武器にまさる。一度の過ちは多くの善を損なう。死んだ蠅は香料作りの香油を腐らせ、臭くする。僅かな愚行は知恵や名誉より高くつく」。
・悪臭は芳香を台無しにする。賢者の知恵も愚か者の行為により、損なわれる。
−コヘレト10:2-3「賢者の心は右へ、愚者の心は左へ。愚者は道行くときすら愚かで、だれにでも自分は愚者だと言いふらす」。
・愚者の悪影響が最も出やすい場面は、指導者が愚かな時である。為政者が愚かな国は政治が乱れる。
−コヘレト10:16-17「いかに不幸なことか、王が召し使いのようで、役人らが朝から食い散らしている国よ。いかに幸いなことか、王が高貴な生まれで、役人らがしかるべき時に食事をし、決して酔わず、力に満ちている国よ」。
・聖書にある愚かな王の代表はレハベアムである。イスラエルはダビデ・ソロモン時代までは統一王国であったが、ソロモン王の後継者レハブアム(前930―913年在位)時代に南北に分裂する。彼は北部指導者たちから受けた租税軽減の要請に対して、長老たちの助言に従わず、同世代の若者たちの世間知らずの助言を入れて、結果的に王国の分裂を招いた。
-列王記12:12-15「ヤロブアムとすべての民はレハブアムのところに来た。王は彼らに厳しい回答を与えた。王は長老たちの勧めを捨て、若者たちの勧めに従って言った。『父がお前たちに重い軛を負わせたのだから、私は更にそれを重くする。父がお前たちを鞭で懲らしめたのだから、私はさそりで懲らしめる』。王は民の願いを聞き入れなかった」。
・為政者が何を第一に求めるのかで、政治は異なってくる。ソロモンは知恵を求めたが、子のレハベアムは力を求めて誤った。今日の政治家は自分が「取るに足らない若者」であることを自覚しているのだろうか。
-列王記上3:7-9「わが神、主よ、あなたは父ダビデに代わる王として、この僕をお立てになりました。しかし、私は取るに足らない若者で、どのようにふるまうべきかを知りません。僕はあなたのお選びになった民の中にいますが、その民は多く、数えることも調べることもできないほどです。どうか、あなたの民を正しく裁き、善と悪を判断することができるように、この僕に聞き分ける心をお与えください。そうでなければ、この数多いあなたの民を裁くことが、誰にできましょう」。

2.権力にどう向き合うのか

・旧約における知恵の伝統は、王宮に仕える官僚たちにより継承されてきた。コヘレトもその官僚の一人として、王を批判するが、王との関係断絶はするなと解く。
−コヘレト10:4「主人の気持があなたに対してたかぶっても、その場を離れるな。落ち着けば、大きな過ちも見逃してもらえる」。
・箴言も同じ知恵を語る。愚かであっても絶対権力者には逆らうな。逆らえばあなたが滅ぼされるだけだと。
-箴言16:14「王の怒りは死の使い。それをなだめるのは知恵ある人」。
・コヘレトは支配者には逆らわない。しかし支配者の愚かさを見つめている。
−コヘレト10:5-7「太陽の下に、災難なことがあるのを見た。君主の誤りで、愚者が甚だしく高められるかと思えば、金持ちが身を低くして座す。奴隷が馬に乗って行くかと思えば、君侯が奴隷のように徒歩で行く」。
・私たちは支配者の不正にどのように立ち向かえば良いのか。不正を正すには二つの方法があることを歴史は教える。一つは聖書の教えに従う道「敵を愛せ」、しかし「不正には不服従せよ」。ガンジーやキング牧師が取った道だ。もう一つは報復を求める道「目には目を、歯には歯を」、マルコムXが取った道である。私たちはキングの道を選択する。
-マルティン・ルーサー・キング“汝の敵を愛せ”「イエスは汝の敵を愛せよと言われたが、どのようにして私たちは敵を愛することが出来るようになるのか。イエスは敵を好きになれとは言われなかった。我々の子供たちを脅かし、我々の家に爆弾を投げてくるような人をどうして好きになることが出来よう。しかし、好きになれなくても私たちは敵を愛そう。何故ならば、敵を憎んでもそこには何の前進も生まれない。憎しみは憎しみを生むだけだ。愛は贖罪の力を持つ。愛が敵を友に変えることの出来る唯一の力なのだ」」。

3.知恵を生かすには

・世の中には愚者が多い。愚者はわかりもしない未来について、たわ言を語る。
−コヘレト10:12-15「賢者の口の言葉は恵み。愚者の唇は彼自身を呑み込む。愚者はたわ言をもって口を開き、うわ言をもって口を閉ざす。愚者は口数が多い。未来のことはだれにも分からない。死後どうなるのか、誰が教えてくれよう。愚者は労苦してみたところで疲れるだけだ。都に行く道さえ知らないのだから」。
・賢者は口を慎み、役に立つ知恵の言葉を語る。日常の出来事も知恵を働かすことによって改善する。
−コヘレト10:8-10「落とし穴を掘る者は自らそこに落ち、石垣を破る者は蛇にかまれる。石を切り出す者は石に傷つき、木を割る者は木の難に遭う。なまった斧を研いでおけば力が要らない。知恵を備えておけば利益がある」。
・1980年代、日本はバブル景気に沸き、株価は4万円をつけ、土地資産総額は2456兆円まで上がった。「土地価格は上がり続ける」という土地神話がもたらした。バブルは崩壊し、土地資産総額は1228兆円まで低下した(2006年)。多くの金融機関や企業が破綻し、その後20年間経済は停滞した。阿部政権はデフレ克服として、日銀に国債を買わせ、年金ファンドに株を買わせて、新しいバブルを起こし、10年国債金利は0.5%まで低下し、株価は2万円を超えた。日銀は今では年間80兆円の国債を買い(発行額の90%)、保有残高は269兆円と全体の25%を超す(2015年)。国債の日銀引受を原則禁止する財政法5条(中央銀行による財政の穴埋めの禁止)下で、異常事態が進展している。未来は分からないが、常識的にはどこかの時点でバブルは破壊する。日銀が将来、2%の物価上昇という目的を達成し、国債購入を中止すれば、国債価格が急落し、金利は急騰、株価は大暴落するだろう。愚かな政策は持続できない。
−コヘレト10:14「愚者は口数が多い。未来のことはだれにも分からない。死後どうなるのか、誰が教えてくれよう」。
・この中で私たちは何をすべきなのだろうか。マルティン・ニーメラーという牧師がいる。ナチ時代に活躍したドイツの牧師で反ナチ抵抗運動に参加し、そのため1937年に強制収容所に収監され、戦争終了まで出獄が許されなかった闘士である。その彼が戦後、「反ナチ運動を始めるのが遅すぎた」と語っている。
-マルティン・ニーメラーの告白から「ナチ党が共産主義者を攻撃した時、私は多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。ついでナチ党は社会主義者を攻撃した。私は前よりも不安だったが、社会主義者ではなかったから何もしなかった。ついで学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した―しかし、それは遅すぎた」。
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