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トップ  >  ヨブ記  >  2013年2月21日祈祷会(ヨブ記41章、レビヤタン、人間が制御できないもの)
1. 創造神話の怪物レビヤタンの示すもの

・ヨブ記では40章前半に創造神話の陸の怪物ベヘモットが、40章後半から41章に海の怪物レビヤタンが登場する。両者はメソポタミヤ神話をイスラエルが神の創造神話の中に取り入れたものである。
−ラテン語エズラ記6:47-51「五日目にあなたは、水が集まっている第七の部分に、生き物や鳥や魚を生み出すように命じられました・・・それからあなたは、二つの生き物をえり分けられ、その一つをベヘモット、もう一つをレビヤタンと名付けられました。そしてあなたは、両者を互いに引き離されました。水が集まっている第七の部分に両者を置くことができなかったからです。そしてベヘモットには三日目に乾いた土地の一部を与え、そこに住むようにされました・・・レビヤタンには水のある第七の部分をお与えになりました」。
・レビヤタンはここではナイルに住む鰐の姿で示される。普通の鰐であれば鉤で捕らえることが出来ようが、この怪物はそうはいくまいと語られる。
−ヨブ記40:25-26「お前はレビヤタンを鉤にかけて引き上げ、その舌を縄で捕えて屈服させることができるか。お前はその鼻に綱をつけ、顎を貫いて轡をかけることができるか」。
・ヨブ記では人間では制御できないものの象徴としてレビヤタンが示される。
−ヨブ記41:10-17「彼がくしゃみをすれば、両眼は曙のまばたきのように光を放ち始める。口からは火炎が噴き出し、火の粉が飛び散る。煮えたぎる鍋の勢いで鼻からは煙が吹き出る。喉は燃える炭火、口からは炎が吹き出る。首には猛威が宿り、顔には威嚇がみなぎっている。筋肉は幾重にも重なり合い、しっかり彼を包んでびくともしない。心臓は石のように硬く、石臼のように硬い。彼が立ち上がれば神々もおののき、取り乱して逃げ惑う」。
・私たちはこのようなヨブ記の記述を神話として嘲笑するが、神の創造の業は神話でしか表象できないものではないか。ベヘモットとレビヤタンの物語を通して、ヨブには理解できない創造の神秘が語られ、その神秘の中では「自分は正しい、神は間違っている、私は神を告発する」というヨブの訴えがいかに愚かであるかが示される。
−ヨブ記41:1-3「勝ち目があると思っても、落胆するだけだ。見ただけでも打ちのめされるほどなのだから。彼を挑発するほど勇猛な者はいまい。いるなら、私の前に立て。あえて私の前に立つ者があれば、その者には褒美を与えよう。天の下にあるすべてのものは私のものだ」。

2.人間の限界を知る

・生命誕生の歴史と人間の歴史を対比した時、人間は如何に小さな存在であるかがわかる。地球が生まれたのは46億年前、人類が登場したのは20万年前、その壮大な歴史の中で、私たちは70年か80年の命を生きる。
−「地球が生まれたのはいまから46億年前のことと考えられています。まだ熱かった地球が徐々に冷えて海が出来、生命が生まれたのは地球誕生から6億年位経った40億年前です・・・原始の生命が生まれたところは深い海の底で、海水の温度も高いところでした。何故浅い海に生命が生まれなかったのでしょうか。その大きな理由の一つと考えられるのが生命に有害な宇宙線です。現在、生命を守る地球の多重バリアーには、地球磁場、大気、オゾン層がありますが、地球磁場がまだ形成されていなかった頃には浅い海で生命が生まれたとしても降り注ぐ宇宙線によって壊されてしまったのでしょう。生命が浅い海に移動してくることができたのは地球に磁場が形成され、有害な宇宙線の進入を防ぐことが出来るようになった27億年前です。そして、生物が陸上に進出してきたのは紫外線を防ぐオゾン層が形成された5億年前のことです」(生命の誕生と放射線(原子力教育を考える会HPから)。
・ヨブ記のレビヤタンはやがて巨大な竜(サタン)としてヨハネ黙示録に描かれる。
−ヨハネ黙示録12:9「この巨大な竜、年を経た蛇、悪魔とかサタンとか呼ばれるもの、全人類を惑わす者は、投げ落とされた。地上に投げ落とされたのである。その使いたちも、もろともに投げ落とされた」。
・ヨハネ黙示録ではこのサタンが捕らえられ、封じ込められることによって、神の国(千年王国)が登場すると考えられた。ヨハネはサタン(ローマ帝国)の支配も神によって制御されることを神話的表象で描いた。
−ヨハネ黙示録20:2-3「この天使は、悪魔でもサタンでもある、年を経たあの蛇、つまり竜を取り押さえ、千年の間縛っておき、底なしの淵に投げ入れ、鍵をかけ、その上に封印を施して、千年が終わるまで、もうそれ以上、諸国の民を惑わさないようにした。その後で、竜はしばらくの間、解放されるはずである」。
・しかしこの神話的表象を文字通りに信じた時、そこに様々な問題が生じる。アメリカ宗教史を研究する森孝一は、アメリカ人は千年王国を文字通りに信じ、それを持って自分たちの戦争を正当化してきたと述べる。
-森孝一・千年王国とアメリカの使命「千年王国論には前千年王国論(キリストが再臨し,この世を裁いた後、千年王国を実現する)と後千年王国論(神の民の努力により千年王国が実現し,その後にキリストが再臨する)があり、アメリカに入植したピューリタンたちは前千年王国論に従い,キリストの再臨に備えるために純粋な教会と正しい国家の建設を目指した。その理想がジョン・ウィスロップの説教「丘の上の町」に示される選民思想である。しかし、ジュナサン・エドワーズが中心となってなされた第一次大覚醒運動(1730−1760年)より後千年王国論が主流となり、それがアメリカの独立運動をもたらし,その後のアメリカの使命感(キリスト陣営の旗手)となり、外交政策の基本ともなった。この二元論的な思考が植民地時代には対立するニュー・フランスの国教カトリックを「反キリスト」とし、やがては植民地を束縛する英国本国を終末時における「反キリスト」とみなす独立戦争が始まる。その後、この後千年王国思想が「世俗的千年王国論」となり、冷戦期においてはキリスト陣営が自由主義陣営であり、反キリスト陣営が共産主義陣営になり、ソ連を「悪の枢軸」と呼んで対立し、反共産主義の戦いとしてのベトナム戦争を招来する。冷戦後は対立軸がイランとなり、イランが反キリストになっていき,その結果アフガン・イラク戦争が起きていく」(同志社大学一神教学際研究センター2007年シンポジウムから)。
・「聖書はキリスト教信仰の基本であるが、それは2000年前の言葉と思想で書かれており、それを現代の言葉で読み直す(非神話化する)」ことが必要である。しかし、現代世界の唯一の超大国であるアメリカにおいて「聖書の言葉は神の言葉であり,文字通りに理解すべきだ」と信じる人々が多数を占め、「聖書の教え(ヨハネ黙示録の千年王国説)に従って外交が行われる事実は不気味である。私たちはヨブ記を笑えない世界に住んでいるのだ。
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