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トップ  >  ダニエル書  >  2011年12月22日祈祷会(ダニエル書7:1-18、幻を見る)
1.四頭の獣の幻

・ダニエル書は黙示書であり、幻を通して未来を啓示される。ダニエル7章がその典型で、初めて読む人は、そこに何が書いてあるのかまるで理解できない。しかし、ダニエル7章は驚くべきメッセージを内に秘めている。ダニエルは、ある夜、海から四頭の獣が現れる幻を見た。最初の獣は鷲の翼をもつ獅子、当時の人々は、バビロニヤ帝国のシンボルが翼を持った獅子であることを知っていたから、この獣がバビロニヤを指すと理解できた。
-ダニエル7:1-4「バビロンの王ベルシャツァルの治世元年のことである。ダニエルは、眠っているとき頭に幻が浮かび、一つの夢を見た。彼はその夢を記録することにし、次のように書き起こした。ある夜、私は幻を見た。見よ、天の四方から風が起こって、大海を波立たせた。すると、その海から四頭の大きな獣が現れた。それぞれ形が異なり、第一のものは獅子のようであったが、鷲の翼が生えていた。見ていると、翼は引き抜かれ、地面から起き上がらされて人間のようにその足で立ち、人間の心が与えられた」。
・次に現れたのは口に三本の肋骨を加えた熊、残忍な征服者として知られたメディア帝国である。三番目は四つの翼と四つの頭を持つ豹。豹はペルシャ帝国の紋章だった。第四の獣は巨大な鉄の歯を持つ。圧倒的な軍事力で世界を制圧したギリシャのアレキサンダー大王で、十本の角がその後継者たちを指す。最期の角の後にもう一本の小さな角が現れる。アレキサンダーから数えて11代目のシリヤ王、アンティオコス・エピファネスである。
-ダニエル7:5-8「第二の獣は熊のようで、横ざまに寝て、三本の肋骨を口にくわえていた。これに向かって『立て、多くの肉を食らえ』という声がした。次に見えたのはまた別の獣で、豹のようであった。背には鳥の翼が四つあり、頭も四つあって、権力がこの獣に与えられた。この夜の幻で更に続けて見たものは、第四の獣で、ものすごく、恐ろしく、非常に強く、巨大な鉄の歯を持ち、食らい、かみ砕き、残りを足で踏みにじった。他の獣と異なって、これには十本の角があった。その角を眺めていると、もう一本の小さな角が生えてきて、先の角のうち三本はそのために引き抜かれてしまった。この小さな角には人間のように目があり、また、口もあって尊大なことを語っていた」。
・ダニエルは、幻を通して、バビロニヤからシリヤまでの400年間にわたる世界の支配者の変遷を見せられた。紀元前7世紀、バビロニヤとメディアが世界帝国としてその権勢を誇るが、やがてペルシャ王クロス王がこの二つの国を滅ぼす。そのペルシャもギリシャのアレキサンダーに滅ぼされ、アレキサンダーの大帝国は、彼の死と共に四つの帝国に分裂する。その中でパレスチナの支配権はシリヤが握り、アンティオコス・エピファネスが今、ユダを統治し、迫害している。そのような状況の中で、ダニエルは幻を見ている。それがダニエル書7章である。

2.神の裁きの幻

・ユダはシリヤの支配下にあり、シリヤ王アンティオコスの迫害に苦しめられていた。アンティオコスは植民地ユダが自分に服さないのは、その宗教のためだと思い、信仰の中心であったエルサレム神殿のなかに、自分の神であるオリンポスのゼウス像を建て、これを拝むように強制した。
-ダニエル書7:25-26「彼はいと高き方に敵対して語り、いと高き方の聖者らを悩ます。彼は時と法を変えようとたくらむ。聖者らは彼の手に渡され、一時期、二時期、半時期がたつ」。
・アンティオコスは聖書を燃やし、割礼を禁止し、ギリシャの神を拝むように強制した。禁止に逆らって、幼児に割礼を施した母親を子もろとも殺し、幼児の死体を母親の首にかけてさらすことさえした。この迫害の中で、ダニエルは神に訴える「あなたは何故、このような暴虐の振舞いを許されるのか、何時までこのような苦しみは続くのか」。そのダニエルの問いに答えて示された啓示が7章の幻である。最初に、荒れ狂う大海がダニエルに示される。この地上世界は、荒れ狂っている。ダニエルの仲間のあるものは殉教の死を選んだ。他の者は武力で抵抗した。ダニエルにとって地上世界は荒れ狂う混沌(カオス)の海であった。
・その混沌の海の中から、支配者たちが現れてくる。あるものは獅子の形で、あるものは熊、別のものは豹、形は異なるが、いずれもその牙、その力で相手を制圧し、従わせる。それぞれの権力は一時期、勢威を誇るがやがて滅びる。バビロニヤは滅ぼされ、ペルシャもギリシャも今は滅んだ。地上の権力は過ぎ去る。今、ダニエルの目の前には、勝ち誇るシリヤ王アンティオコスがいるが、彼もやがて滅びる。幻はそれを示している。
・どのようにして、迫害者アンティオコスが滅びるのか、9節から場面が変る。天に王座が据えられ、「日の老いたるもの(神)」が裁きの座につく。獣(アンティオコス)は尊大なことを言い続けているが、ついにその獣は殺され、死体は破壊されて、燃え盛る火に投げ込まれた。また、「他の獣は権力を奪われたが、それぞれの定めの時まで生かしておかれた」。
-ダニエル書7:9-12「なお見ていると、王座が据えられ「日の老いたる者」がそこに座した。その衣は雪のように白く、その白髪は清らかな羊の毛のようであった。その王座は燃える炎、その車輪は燃える火、その前から火の川が流れ出ていた。幾千人が御前に仕え、幾万人が御前に立った。裁き主は席に着き、巻物が繰り広げられた。さて、その間にもこの角は尊大なことを語り続けていたが、ついにその獣は殺され、死体は破壊されて燃え盛る火に投げ込まれた。他の獣は権力を奪われたが、それぞれの定めの時まで生かしておかれた」。
・地上の権力は、神が許して置かれる期間だけ生き長らえる。全ての民とその統治者を支配しておられるのは神であり、権力者は「定めの時まで」支配を許される存在にしか過ぎない。今、地上で猛威をふるう圧制者、仲間を殺し、聖所を汚す暴虐者アンティオコスでさえ、絶対者ではなく、単なる人間にしか過ぎない。神を信じる時、すべての人間が相対化され、どのような圧制者、権力者も恐れるに足らぬ存在になる。
・これがアウシュビッツにおいて、ユダヤ人が見出した信仰である。彼らは強制収容所の中で、ダニエル書を読んだ。今、彼等の目の前に、民族を抹殺しようとするヒトラーとその配下の者がいる。彼らは暴威をふるい、多くの仲間が殺され、自分たちも殺されようとしている。それにも関わらず、ヒトラーの上にも神の支配が厳然としてあり、「定めの時が満ちた時」ヒトラーは裁かれるとダニエル書は告げた。彼らは目の前の絶望的状況を越えた将来への希望を持つ。彼らはここで死ぬかもしれない。しかし、死を超えて神は彼等を愛され、配慮される。彼らはこの信仰に立って、「シャローム」とお互いを祝福して、ガス室の中に入っていったと記録は伝える。
・ダニエルの希望の根拠が7章13-14節に示されている。
-ダニエル書7:13-14「夜の幻をなお見ていると、見よ、「人の子」のような者が天の雲に乗り「日の老いたる者」の前に来て、そのもとに進み、権威、威光、王権を受けた。諸国、諸族、諸言語の民は皆、彼に仕え、彼の支配はとこしえに続き、その統治は滅びることがない」。
・迫害者はやがて裁かれ、人の子が来て神の国が始まる。ダニエル12:2は言う「多くの者が地の塵の中の眠りから目覚める。ある者は永遠の生命に入り、ある者は永久に続く恥と憎悪の的となる」。例え、この苦難の中に死のうとも、死を貫いて私たちを愛される方がいるとダニエルは知らされる。
・ダニエルが見たように、神は定めの時まで、大海を荒れるままにさせておられる。地上には争いは絶えない。ダニエルの時代に、シリヤ王アンティオコスによって迫害されたユダヤの民が、今、パレスチナの地で今度は抑圧者としてアラブ人を迫害している。アラブ人たちは、絶望の中で自爆テロを繰り返している。
・人間にとって恐ろしいのは、苦しみに圧倒されて、目の前の問題だけが大きくのしかかり、苦難の意味や自分が今どこに立っているのかがわからなくなった時だ。神はダニエルに「地上ではなく天を見よ、天ではこの苦難を終らせるための会議が既に開かれている」と示された。苦しみの中に置かれた時、私たちは目の前の苦しみしか見えなくなり、その苦しみは何時までも続くと思い、絶望する。その絶望がテロを生む。しかし、それは何も解決せず、事態を悪くするだけだ。ダニエルの時代にも、多くの人々は圧制に武力で抵抗し、マカベア戦争を始めた。それは一時期成功するがダニエル書は評価しない(11:34)。一人の圧制者が倒されても新しい圧政者が現れるだけだ。人間の歴史はダニエル書が描くとおり、獣が次から次に出てくる歴史である。
・絶望の先には死がある。現代の日本においても、年間3万人の人が自殺する。毎年、3万人が自殺する社会は、ダニエルの描く獣たちの荒れ狂う世界と同じ場所である。私たちは彼等にもダニエルが見た幻を伝えなければならない。神が天だけではなく、この地上をも支配されておられることを知る時、世界は違ったものに見えてくる。私たちに襲いかかる苦しみも悲しみも、全て神の了解の下にある業であり、それはやがて終る。神はこの苦難を私たちの「終わりの日に備えて練り清め、純白に鍛える」(ダニエル11:35)ためになされていることを知る時、苦しみの意味が違ってくる。苦しみから逃れるために自殺するのではなく、苦しみの向こうにある祝福に目を注ぐようになる。今は何故かわからない出来事も、時が満たされる時、それが私たちへの祝福であることがわかる時が来る。この喜ばしい福音を苦しんでいる人々に伝えよ。ダニエル書はそう、私たちに語りかけている。
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