すべて重荷を負うて苦労している者は、私のもとに来なさい。

トップ  >  詩編  >  2010年8月18日祈祷会(詩編60篇、敗戦の苦しみの中で)
1.国が滅び、周辺国に逃れようとする人々

・詩編60篇の表題は「ダビデがアラム・ナハライムおよびツォバのアラムと戦い、ヨアブが帰って来て塩の谷で一万二千人のエドム人を討ち取った時」とする。これはダビデがエドムを占領した時の記事である。
-競汽爛┘8:13-14「ダビデはアラムを討って帰る途中、塩の谷でエドム人一万八千を討ち殺し、名声を得た。彼はエドムに守備隊を置くことにした。守備隊はエドム全土に置かれ、全エドムはダビデに隷属した」。
・しかし詩編60篇はイスラエルが敗戦下にある状況を示すので、表題は的外れであろう。バビロン軍によって南王国が滅ぼされ、人々が国の将来を思い、また自分たちの行く末を案じていた時の歌と推測される。敗戦によって(3節「我らを突き放し、我らを散らされた」)、国中が動揺している様(4節「大地は動揺しています」)を詩編は暗示する。
-詩編60:3-4「神よ、あなたは我らを突き放し、怒って我らを散らされた。どうか我らを立ち帰らせてください。あなたは大地を揺るがせ、打ち砕かれた。どうか砕かれたところを癒してください、大地は動揺しています」。
・国の滅亡という災いが臨んだ時、イスラエルの人々はそれが神から来ると受け止めた(5節「辛苦の酒を飲まされた」)。またそれは神の警告によるものと理解した(6節)。それゆえ人々は神が怒りを収め、その民を救済されるよう祈る。
-詩編60:5-7「あなたは御自分の民に辛苦を思い知らせ、よろめき倒れるほど、辛苦の酒を飲ませられた。あなたを畏れる人に対してそれを警告とし、真理を前にしてその警告を受け入れるようにされた。あなたの愛する人々が助け出されるように、右の御手でお救いください。それを我らへの答えとしてください」。
・人々は神にかつての約束を守ってくれるよう求める。「あなたは私たちが失った北イスラエルの領土を回復すると言われた(8節)。あなたは二つの分裂した祖国を統合されると約束された(9節)。また周辺のモアブ、エドム、ペリシテも下さると約束された(9節)。今、その約束を果たして下さい」と。
-詩編60:8-10「神は聖所から宣言された『私は喜び勇んでシケムを分配しよう。スコトの野を測量しよう。ギレアドは私のもの、マナセも私のもの、エフライムは私の頭の兜、ユダは私の采配、モアブは私のたらい。エドムに私の履物を投げ、ペリシテに私の叫びを響かせよう』」。

2.人間による救いは虚しい

・バビロン軍の侵攻と共に多くの人々は周辺国に逃れた。戦乱の中で生き残った人々はこれからエドムに逃れようとしている。そのエドムへの道のりを守って下さい、あなたが先導して下さいと詩人は神の加護を祈る。
-詩編60:11-12「包囲された町に誰が私を導いてくれるのか。エドムに、誰が私を先導してくれるのか。神よ、あなたは我らを突き放されたのか。神よ、あなたは我らと共に出陣してくださらないのか」。
・戦乱の敗北の中で詩人は思う「人間の与える救いは虚しい。私たちはエジプト軍に頼って難局を乗り切ろうとしたが無駄であった」。混乱の中で詩人は神こそ救いであることを改めて思う。
-詩編60:13-14「どうか我らを助け、敵からお救いください。人間の与える救いはむなしいものです。神と共に我らは力を振るいます。神が敵を踏みにじってくださいます」。
・預言者たちは繰り返し、神以外に救いはないと述べて来た。ホセアはエジプトやアッシリアに迎合する北イスラエルの政策を糾弾した。
-ホセア7:10-11「イスラエル・・・は神なる主に帰らず、これらすべてのことがあっても主を尋ね求めようとしない。エフライムは鳩のようだ。愚かで、悟りがない。エジプトに助けを求め、あるいは、アッシリアに頼って行く」。
・イザヤはアッシリアに対抗するためにエジプトの軍備に頼ろうとするユダ王国の為政者を戒めた。
-イザヤ31:1-3「災いだ、助けを求めてエジプトに下り、馬を支えとする者は。彼らは戦車の数が多く、騎兵の数がおびただしいことを頼りと(するが)・・・エジプト人は人であって、神ではない。その馬は肉なるものにすぎず、霊ではない。主が御手を伸ばされると、助けを与える者はつまずき、助けを受けている者は倒れ、皆共に滅びる」。
・預言者の批判に耳を傾けずエジプトに頼った北イスラエルはアッシリアに滅ぼされ(前721年)、エジプトに援軍を求めてバビロンに反旗を翻した南ユダも滅ぼされた(前587年)。バビロン捕囚期こそは、この民がこうした王国の滅亡を「人間による救い」の挫折として経験し、「人間による救い」の可能性が完全に断たれた時代であった。「人間による救い」が断たれた所から、「神による救い」が始まる。捕囚の民が聞いた声はその神の救済計画だった。
-イザヤ43:1-6「ヤコブよ、あなたを創造された主は・・・今、こう言われる。恐れるな、私はあなたを贖う・・・私は東からあなたの子孫を連れ帰り、西からあなたを集める。北に向かっては、行かせよ、と南に向かっては、引き止めるな、と言う。私の息子たちを遠くから、娘たちを地の果てから連れ帰れ、と言う」。
・戦前の日本はソ連と不可侵条約を結んで米国と戦争し、戦後の日本は米国と軍事同盟を結んで、ロシアや中国を牽制する。管首相は「核の抑止力は必要だ」というが、本当に必要なのか。また日米安保条約に基づいて国内に米軍基地を維持する必要が本当にあるのか。詩編60篇は「人間による救い」とは何かを考えよと求めている。
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