2019年7月11日祈祷会(列王記上3章、民を治めるための知恵を求めるソロモン)

1.ソロモンの祈り

・王位に就いたソロモンが最初に行ったのはエジプトとの同盟であり、エジプト王の娘を妻に迎えた。
−列王記上3:1-2「ソロモンは、エジプトの王ファラオの婿となった。彼はファラオの娘を王妃としてダビデの町に迎え入れ、宮殿、神殿、エルサレムを囲む城壁の造営が終わるのを待った」。
・政治の安定のためには近隣王国との同盟は必要なことであったが、それが将来のソロモンの背教を生む。
−列王記上11:1-3「ソロモン王はファラオの娘のほかにもモアブ人、アンモン人、エドム人、シドン人、ヘト人など多くの外国の女を愛した。これらの諸国の民については、主がかつてイスラエルの人々に、『あなたたちは彼らの中に入って行ってはならない。彼らをあなたたちの中に入れてはならない。彼らは必ずあなたたちの心を迷わせ、彼らの神々に向かわせる』と仰せになったが、ソロモンは彼女たちを愛してそのとりことなった。彼には妻たち、すなわち七百人の王妃と三百人の側室がいた。この妻たちが彼の心を迷わせた」。
・ソロモンはまた、「聖なる高台」で生贄を捧げて礼拝した。これは元来異教の神々を祭るものであり、イスラエルでは禁止されていた。ソロモンがやがてたどる背教の道がここに暗示されている。
−列王記上3:3-4「当時はまだ主の御名のために神殿が建てられていなかったので、民は聖なる高台でいけにえをささげていた。ソロモンは主を愛し、父ダビデの授けた掟に従って歩んだが、彼も聖なる高台でいけにえをささげ、香をたいていた。王はいけにえをささげるためにギブオンへ行った。そこに重要な聖なる高台があったからである。ソロモンはその祭壇に一千頭もの焼き尽くす献げ物をささげた」。
・しかし主はこのことを容認され、夢でソロモンに現れ、「願うものを何でも与えよう」と言われた。ソロモンは民を正しく治めるための知恵を求めた。ここにいるソロモンは自己の若さを知る謙遜な王である。
−列王記上3:5-9「その夜、主はギブオンでソロモンの夢枕に立ち『何事でも願うがよい。あなたに与えよう』と言われた。ソロモンは答えた『あなたの僕、私の父ダビデは忠実に、憐れみ深く正しい心をもって御前を歩んだので、あなたは父に豊かな慈しみをお示しになりました。またあなたは・・・その王座につく子を父に与えられました。・・・しかし、私は取るに足らない若者で、どのようにふるまうべきかを知りません。・・・民は多く、数えることも調べることもできないほどです。どうか、あなたの民を正しく裁き、善と悪を判断することができるように、この僕に聞き分ける心をお与えください。そうでなければ、この数多いあなたの民を裁くことが、誰にできましょう』」。
・主はソロモンのこの謙遜な願いを喜ばれ、彼を祝福し、願う知恵を与えると約束された。
−列王記上3:10-12「主はソロモンのこの願いをお喜びになった。神はこう言われた『あなたは自分のために長寿を求めず、富を求めず、また敵の命も求めることなく、訴えを正しく聞き分ける知恵を求めた。見よ、私はあなたの言葉に従って、今あなたに知恵に満ちた賢明な心を与える。あなたの先にも後にもあなたに並ぶ者はいない』」。
・さらにソロモンが求めなかった富と栄光も与えると約束された。
−列王記上列王記3:13-14「私はまた、あなたの求めなかったもの、富と栄光も与える。生涯にわたってあなたと肩を並べうる王は一人もいない。もしあなたが父ダビデの歩んだように、私の掟と戒めを守って、私の道を歩むなら、あなたに長寿をも恵もう」。
・旧約聖書では、夢が神の言葉を伝えるものとして理解されていた。ソロモンへの神の託宣もそうであった。
−列王記上3:15「ソロモンは目を覚まして、それが夢だと知った。ソロモンはエルサレムに帰り、主の契約の箱の前に立って、焼き尽くす献げ物と和解の献げ物をささげ、家臣のすべてを招いて宴を張った」。

2.ダビデとソロモン〜2代目の限界

・ソロモンの知恵の具体例が3:16以下の子をめぐる二人の母親の争いだ。二人の女は共に子は自分の子だと言い争った。ソロモンは言った「決着がつかないなら子を二つに裂き、双方に半分ずつ与えよ」と。
−列王記上3:23-25「王は『剣を持って来るように』と命じた。王の前に剣が持って来られると、王は命じた『生きている子を二つに裂き、一人に半分を、もう一人に他の半分を与えよ』」。
・この時、一人は「この子を生かしてあの女に与えて下さい」と言い、他は「この子を半分に裂いて私にも下さい」と言った。ソロモンは「子を生かしたまえ」と願った女に子を与えた。民はソロモンの知恵を賞賛した。
−列王記上3:27-28「王はそれに答えて宣言した『この子を生かしたまま、先の女に与えよ。この子を殺してはならない。その女がこの子の母である』。王の下した裁きを聞いて、イスラエルの人々は皆、王を畏れ敬うようになった。神の知恵が王のうちにあって、正しい裁きを行うのを見たからである」。
・子を生かすように求めた女が母親であるかどうかはわからないが、親としてよりふさわしいのは事実だ。自己を犠牲にしても子を生かすのが愛だ。人々はソロモンの知恵を称賛した。しかし人々はイエスの言葉を聞かない。イエスは神の言葉はソロモンの知恵に勝ると語られる、「ソロモンに勝るものがここにいる」と。
−マタイ12:42「南の国の女王は裁きの時、今の時代の者たちと一緒に立ち上がり、彼らを罪に定めるであろう。この女王はソロモンの知恵を聞くために、地の果てから来たからである。ここに、ソロモンに勝る者がある」
・1-2章のソロモンは、敵対者たちを粛清し権力基盤を固めていく冷酷な政治家であるが、3章では民のために仕えることを願う謙遜な王がいる。双方ともソロモンであり、やがて政治家ソロモンが信仰者ソロモンより強くなり、国は揺らいでいく。
−列王記上11:6「ソロモンは主の目に悪とされることを行い、父ダビデのようには主に従い通さなかった」。
・ソロモンはダビデと異なる。新約聖書にはダビデの名は58回引用され、ソロモンは10回だ。
−ソロモンは王国を創設したのではなく、父から継承した。二代目の限界(苦労せずに手に入れた)を持つ。
−彼の建てた建物(王宮や神殿)は民の要求に応えたものではなく、自分のためであった。
−彼の国土建設は圧制的な課税と強制労働によって為されている。ゆえにソロモン死後、民は反乱し、王国は分裂した。彼は民に仕えるのではなく、民を支配した。
−彼は主を信じたが、同時に他の神々をも拝んだ。
・その限界の中で列王記3章を読むことが必要だ。列王記記者はソロモンを神格化していない。ソロモンは結果的に必要以上のものを求めて、その報いを受けた。
−第一テモテ6:7-8「私たちは、何も持たずに世に生まれ、世を去るときは何も持って行くことができないからです。食べる物と着る物があれば、私たちはそれで満足すべきです」。